第8話 仕事の質まで変わる
「最高の経営判断は、最高のコンディションから生まれる」
朝六時。
佐伯誠一は、静かな庭をゆっくり歩いていた。
以前なら、この時間にはスマートフォンを片手にメールを確認していた。
しかし今は違う。
鳥のさえずり。
朝露に濡れた木々。
澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。
「朝という時間は、こんなにも静かだったのか……。」
五分だけだった散歩も、いつの間にか二十分ほど続くようになっていた。
無理に続けようと思ったわけではない。
自然と身体が動くようになっていた。
出社すると、秘書が少し驚いた表情を見せた。
「社長、おはようございます。」
「おはよう。」
「今日は随分早いですね。」
「朝の時間を少し変えてみたんだ。」
以前は夜遅くまで仕事をし、その分朝も慌ただしかった。
今は夜更かしをやめたことで、朝に余裕が生まれていた。
その余裕は、不思議と一日の流れまで変えていた。
午前中は新規事業の企画会議だった。
旅行事業に加え、新たな地域資源を活用したプロジェクトについて議論が続く。
若手社員が緊張しながらプレゼンテーションを始めた。
以前の佐伯なら、途中で質問を挟み、数字やリスクを細かく確認していただろう。
しかし、この日は最後まで話を聞いた。
発表が終わると、佐伯はゆっくり口を開いた。
「面白い。」
会議室が静まり返る。
「数字はまだ詰める必要がある。」
「だが、この発想は地域に新しい価値を生み出せる。」
若手社員の表情が一気に明るくなった。
会議終了後、役員の一人が声を掛けてきた。
「社長。」
「最近、会議の雰囲気が変わりましたね。」
「そうか?」
「以前は正解を探す会議でした。」
「今は可能性を探す会議になっています。」
その言葉に、佐伯は少し考え込んだ。
自分では意識していなかった。
しかし、社員は確かに変化を感じていた。
その日の午後。
長年付き合いのある取引先の社長が訪ねてきた。
商談が終わると、相手が笑いながら言った。
「佐伯さん。」
「何でしょう。」
「最近、表情が柔らかくなりましたね。」
「そうですか。」
「以前は話しかけるのに少し緊張しました。」
二人は笑った。
「余裕ができたんでしょうか。」
「いえ。」
佐伯は首を振る。
「忙しさは変わりません。」
「ただ、自分の時間の使い方を少し見直しただけです。」
相手は深くうなずいた。
「それが一番難しいんですよ。」
週末。
佐伯は先生のもとを訪れた。
庭では季節の花が咲き始めていた。
「先生。」
「最近、不思議なことがあります。」
「どんなことでしょう。」
「仕事の量は変わっていません。」
「責任も同じです。」
「でも、一つひとつの判断が以前より落ち着いてできる気がします。」
先生は静かに笑った。
「それは良い変化ですね。」
「身体が整うと、頭も整うものです。」
「逆に、焦りや疲れが強いときほど、人は視野が狭くなります。」
先生は庭の池を指さした。
水面には青空が映っている。
「この池をご覧ください。」
「風がない日は、景色がきれいに映ります。」
「しかし、水面が大きく揺れているとどうでしょう。」
「景色は映りません。」
「人の心も同じです。」
「慌ただしさばかりの毎日では、大切なものが見えなくなることがあります。」
佐伯は静かに池を見つめた。
確かに最近は、小さな変化によく気づくようになっていた。
社員の表情。
家族との会話。
季節の移ろい。
以前なら見過ごしていたものばかりだった。
先生は続けた。
「佐伯さん。」
「経営者にとって一番大切な仕事は何でしょう。」
「判断することです。」
「その通りです。」
「だからこそ、判断する人の状態が何より重要なのです。」
その一言は、佐伯の胸に深く響いた。
会社では設備を点検する。
システムも更新する。
しかし、最も重要な『判断する人』の状態は、誰も管理してくれない。
それは自分自身の責任だった。
帰宅後、佐伯は会社の年間計画書を開いた。
売上目標。
利益目標。
採用計画。
設備投資。
すべて細かく書かれている。
その隣に、新しいページを作った。
タイトルは、
「自分への投資計画」
そこには、たった五つだけ書いた。
・十分な睡眠を確保する
・朝食を大切にする
・毎日歩く
・自然と向き合う時間をつくる
・健康習慣を無理なく続ける
会社には経営計画がある。
人生にも、健康計画があっていい。
そう思えた。
翌週の朝礼。
佐伯は社員へ向けて話した。
「皆さん。」
社員たちが静かに耳を傾ける。
「会社は人で成り立っています。」
「そして、人は健康という土台の上で力を発揮します。」
「忙しいときほど、自分の身体を大切にしてください。」
社員たちは少し驚いた表情を浮かべた。
以前の佐伯からは想像できない言葉だった。
しかし、その言葉には数字では表せない説得力があった。
社長自身が変わり始めていたからである。
その夜、高橋から一本の電話が入った。
「誠一。」
「どうした。」
「顔つきが変わったって言われるだろ。」
佐伯は笑った。
「最近よく言われる。」
「それは身体だけじゃない。」
「考え方が変わった証拠なんだ。」
「でも、まだ旅は終わっていない。」
「次はもっと大事なことを話そう。」
「何だ?」
高橋は静かに答えた。
「本当の資産とは何か。」
電話が切れたあと、その言葉が佐伯の胸に残り続けた。
会社の資産。
預金。
建物。
設備。
信用。
そのどれも大切だ。
しかし、それらすべてを活かすために欠かせないものがある。
佐伯は、その答えに少しずつ近づいていた。
──第9話「本当の資産とは健康だった」へ続く。

- 14,904円 [税込]
新たな健康の源!直井霊芝GY株使用・新・養気霊芝 エキストラ粒270粒 1粒200mgあたり ガノデリン酸 0.4mg以上含有 心と体のケアに最適な「新・養気霊芝」は、日本の美しい自然が育んだ霊芝を使用し、長寿県と言われる長野県で安心して栽培されています。このエキストラ粒は、厳選された直井霊芝GY株を使用し、徹底した品質管理のもとで製造されています。毎日の生活に取り入れやすい粒タイプで、手軽に健康維持をサポートします。健康成分を凝縮したこの霊芝は、忙しい現代人に欠かせない存在です。 「マンネン…

