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短編小説

「定年まで働ける身体を作れ」 第7話 体力が戻る

「変わったのは身体だけではなかった。」

春の柔らかな陽射しが街を包んでいた。

山本修一は、会社へ向かう前にいつもの公園を歩いていた。

最初は十五分だった散歩も、今では三十分ほど歩いても苦にならない。

息が切れることも少なくなった。

歩きながら空を見上げる余裕まで生まれていた。

「ずいぶん変わったな。」

そうつぶやいた時、一人の女性が声を掛けた。

「最近、歩く姿が軽くなりましたね。」

毎朝ラジオ体操で顔を合わせる女性だった。

山本は照れ笑いを浮かべる。

「少しずつ続けてきただけなんです。」


会社でも、小さな変化が現れていた。

午後になると集中力が切れていた以前とは違い、会議でも最後まで話を聞き、自分の考えを落ち着いて伝えられる日が増えた。

若手社員の佐藤が言う。

「部長、最近すごく元気ですね。」

山本は首を振る。

「元気というより、無理をしなくなっただけかな。」

「頑張り過ぎるより、毎日続けることのほうが大切だと気付いたよ。」

佐藤はその言葉をメモ帳に書き留めた。


昼休み。

社員食堂で同期の田村と向かい合う。

「山本、顔色がいいな。」

「そうか?」

「去年とは別人みたいだ。」

山本は笑いながら答えた。

「特別なことはしてない。」

「朝歩いて、夜更かしを減らして、食事を少し見直した。」

「それから、自分で納得できる健康習慣を続けている。」

田村は感心したようにうなずいた。

「結局、それが一番難しいんだよな。」


週末。

中村との約束どおり、久しぶりにゴルフ場へ向かった。

以前なら十八ホールを回ることに不安があった。

しかし今日は違う。

「無理はしない。」

「楽しもう。」

それだけを決めてスタートした。

前半九ホール。

息は上がる。

それでも歩ける。

昼食を終えた中村が笑う。

「どうだ?」

山本も笑顔で答える。

「昔ほど飛ばない。」

「でも、最後まで回れそうだ。」


午後。

十八番ホールを終えた二人はクラブハウスでコーヒーを飲んでいた。

「最後まで歩けたな。」

中村が言う。

山本は静かにうなずく。

「去年だったら途中でバテていたと思う。」

「でも今回は違った。」

飛距離は若い頃ほどではない。

スコアも特別良いわけではない。

それでも、大きな達成感があった。

「まだできる。」

その実感が何よりうれしかった。


帰宅すると、妻の恵子が笑顔で迎えた。

「今日はどうだった?」

「最後まで回れたよ。」

「本当に?」

「途中で休みながらだけどね。」

恵子はほっとした表情を見せた。

「最近、表情まで明るくなった気がする。」

その言葉に山本は少し照れた。

「身体が少し楽になると、気持ちも変わるんだな。」


翌週。

会社では若手社員向けの研修が行われた。

山本は講師役を任される。

以前なら長時間話すだけで疲れていた。

しかし今日は最後まで集中して話すことができた。

研修終了後、一人の若手社員が声を掛けてきた。

「部長。」

「健康って年を取ってから考えるものだと思っていました。」

山本は笑った。

「私もそう思っていた。」

「でも、本当は違う。」

「今日の積み重ねが十年後の自分をつくるんだ。」

その言葉は、自分自身への言葉でもあった。


夜。

山本は研究会で学んだ資料を読み返していた。

生活習慣。

睡眠。

運動。

栄養。

そして、自分が納得して選んだ健康習慣。

養気霊芝についても、品質や製造への考え方を理解したうえで、自身の生活習慣の一部として続けている。

山本は改めて思う。

「健康は一つのものに頼るのではなく、毎日の積み重ねなんだ。」


ノートを開く。

今日のタイトルは、

『体力が戻る』

ゆっくりと書き始めた。

『昨日より今日。』

『今日より明日。』

『小さな変化は、必ず積み重なる。』

『焦らず、続けること。』

そして最後に書いた。

『身体が動くと、心も前を向く。』


休日。

庭で花の手入れをしていると、息子が帰ってきた。

「父さん。」

「今度、登山に行かない?」

少し前なら迷っていただろう。

しかし山本は笑顔で答えた。

「いいな。」

「ゆっくり登ろう。」

息子も笑った。

「昔みたいに競争しなくていいから。」

二人は声を上げて笑った。

その笑顔を見ていた恵子も微笑む。

山本は空を見上げる。

体力とは、筋力や持久力だけではない。

家族と出かけたいと思える気持ち。

仕事に向かう意欲。

未来を楽しみにできる心。

そのすべてが少しずつ戻ってきていた。

そして、その先にはもう一つの楽しみが待っている。

若い頃に夢中になっていた趣味。

もう一度、あの時間を取り戻してみたい。

そんな思いが静かに芽生えていた。

──第8話「趣味も再開」へ続く。


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