【日曜日企画】心と身体が喜ぶ暮らし ❶32
第1シリーズ 「四季を楽しむ健康歳時記」
第32話 秋の夜長を楽しむ、心を休める時間
――忙しい毎日から少し離れて、自分を取り戻す秋のひととき
秋になると、日が暮れるのが少しずつ早くなり、夜の時間が長く感じられるようになります。
夏の間は、明るい時間が長く、外出や活動を楽しむ機会も多かったものです。しかし、秋が深まるにつれて、夕方の風に涼しさを感じ、家で過ごす時間が自然と増えていきます。
窓の外から聞こえる虫の声。
温かいお茶から立ち上る湯気。
お気に入りの本を開く静かな時間。
そんな何気ないひとときに、心がほっとすることがあります。
仕事や家事、人付き合いなど、私たちは毎日、さまざまなことに気を配りながら生活しています。
だからこそ、秋の夜長には、少しだけ立ち止まり、自分の心を休ませる時間をつくってみてはいかがでしょうか。
今回は、秋の夜を心地よく過ごすための暮らしの知恵について考えてみたいと思います。
■ 忙しい毎日には、心を休める時間が必要
一日の終わり、ようやく仕事や家事が一段落したと思ったら、スマートフォンを手に取り、ニュースやSNSを見始める。
気がつけば、かなりの時間が過ぎていた。
そんな経験はないでしょうか。
便利な時代になり、私たちはいつでも情報を手に入れられるようになりました。
しかし、情報を受け取り続けることは、知らず知らずのうちに心を忙しくさせている場合もあります。
明日の仕事のこと、家族のこと、将来のこと。
考え始めると、次から次へと気になることが浮かんできます。
身体は家で休んでいても、頭の中では仕事や予定が動き続けている。そんな夜もあるかもしれません。
もちろん、考えること自体が悪いわけではありません。
ただ、一日の中に、何も急がなくてよい時間を持つことも大切です。
秋の夜長は、そんな時間を取り戻すよい機会です。
■ 読書は、自分だけの静かな旅
秋といえば「読書の秋」。
昔から親しまれてきた言葉ですが、読書には、日常から少し離れ、自分の世界を広げてくれる楽しさがあります。
小説を読めば、知らない土地や時代を旅することができます。
歴史の本を開けば、先人たちの暮らしや考え方に触れられます。
自然や食文化の本を読めば、普段何気なく見ている風景にも、新しい発見が生まれるでしょう。
旅に出る時間がなくても、本を通じて遠くの土地を訪れることができます。
例えば、信州の山里の暮らしについて読んでみる。昔の人々がどのように季節の食材を保存し、冬に備えていたのかを知る。
そうすると、いつもの食卓や地域の風景が、少し違って見えてくるかもしれません。
読書に決まった方法はありません。
一冊を最後まで読み切る必要もなければ、難しい本に挑戦する必要もありません。
好きなページを数ページ読むだけでも十分です。
大切なのは、誰かに評価されるためではなく、自分が楽しむために本を開くことです。
■ 温かい飲み物で、夜のひとときを楽しむ
秋の夜には、温かい飲み物もよく似合います。
お気に入りの湯のみやカップに、お茶を入れる。
湯気を眺めながら、ゆっくりと香りを楽しむ。
それだけでも、気持ちを切り替えるきっかけになります。
日本には、緑茶、ほうじ茶、番茶、そば茶など、さまざまなお茶の文化があります。
地域によって親しまれている飲み物も異なり、その土地ならではの味わいに出会うのも旅の楽しみです。
例えば、信州ではそば茶を楽しむ人もいます。香ばしい風味は、秋の落ち着いた夜にもよく合います。
飲み物を選ぶときには、その日の体調や時間帯にも気を配りたいものです。
緑茶や紅茶などにはカフェインが含まれています。眠りに影響を感じる人は、夜遅い時間にはカフェインを控え、麦茶やカフェインを含まない飲み物を選ぶのも一つの方法です。
飲み物そのものだけでなく、ゆっくり味わう時間を楽しむ。
それが、秋の夜の小さな贅沢ではないでしょうか。
■ 秋の夜は、家族との会話も大切に
忙しい毎日の中では、家族と一緒に過ごしていても、ゆっくり会話をする時間が少なくなりがちです。
食事をしながら仕事の話をしたり、明日の予定を確認したり。
必要な連絡はしていても、何気ない会話を楽しむ時間は、意外と少ないものです。
そんなときこそ、秋の夜を利用してみましょう。
「今日はどんな一日だった?」
「最近、何か楽しいことはあった?」
そんな簡単な言葉から会話を始めてみる。
特別な話題がなくても構いません。
休日に行ってみたい場所、食べてみたい秋の味覚、昔訪れた旅先の思い出。
話しているうちに、懐かしい記憶がよみがえったり、次の休日の楽しみが見つかったりするかもしれません。
人と過ごす時間も、一人で静かに過ごす時間も、どちらも大切です。
自分にとって心地よい距離感を見つけながら、夜の時間を楽しみたいものです。
■ 夜を楽しむために、眠る時間も大切に
秋の夜長という言葉を聞くと、つい夜更かしをしたくなることもあります。
読書に夢中になったり、映画を見たり、趣味に時間を使ったり。
それも秋の楽しみの一つでしょう。
ただし、夜の時間を楽しむことと、睡眠時間を削ることは別です。
睡眠は、心身を休ませ、翌日の活動に備えるために大切な時間です。
夜遅くまで明るい画面を見続けたり、寝る直前まで仕事をしたりすると、気持ちが落ち着かず、眠りに入りにくくなる場合もあります。
そこで、眠る前には少しずつ活動を終える習慣をつくってみましょう。
例えば、
- 寝る前はスマートフォンを見る時間を短くする。
- 照明を少し落として、静かな時間を過ごす。
- 明日の予定は早めに確認しておく。
- 眠る時間を大きく変えないようにする。
こうした小さな工夫が、夜の過ごし方を見直すきっかけになります。
秋の夜長を楽しむためにも、翌朝を気持ちよく迎えられるようにしたいものです。
■ 心を休めることは、自分を大切にすること
私たちは、仕事や家庭で責任を持つ立場になるほど、自分のことを後回しにしてしまうことがあります。
誰かのために時間を使い、期待に応えようと努力する。
それは、とても大切なことです。
しかし、自分自身が疲れ切ってしまっては、毎日の暮らしを楽しむ余裕も少なくなってしまいます。
だからこそ、一日の終わりには、自分のためだけに使う時間を少し持ってみてはいかがでしょうか。
本を読む。
お茶を飲む。
音楽を聴く。
窓の外の月を眺める。
何もせず、静かに過ごす。
何かを成し遂げなくてもいい。
誰かの役に立たなくてもいい。
そんな時間があってもよいのだと思います。
健康というと、食事や運動、睡眠など、身体のことに目が向きがちです。
けれど、心が穏やかでいられる時間を持つことも、健やかな暮らしを考えるうえで大切な要素です。
秋の夜長は、そんなことを思い出させてくれる季節なのかもしれません。
■ 今夜は、少しだけ自分の時間を
秋の夜は、これからさらに長くなっていきます。
せっかくの季節ですから、時間に追われるだけでなく、その長さを楽しんでみたいものです。
今夜は、スマートフォンを少し早めに置いて、お気に入りのお茶を入れてみませんか。
読みかけの本を開くのもよいでしょう。
家族と話すのも、一人で静かに過ごすのもよいでしょう。
大切なのは、自分にとって心地よい時間を見つけることです。
忙しい毎日の中に、ほんの少しの余白をつくる。
その余白が、明日を迎える心のゆとりにつながっていくのだと思います。
秋の夜長は、何かを頑張る時間ではなく、自分をいたわる時間にしてみましょう。
今日からできる「秋の夜の過ごし方」
☑ 寝る前にスマートフォンから少し離れる
☑ お気に入りの本を数ページ読んでみる
☑ 温かい飲み物をゆっくり味わう
☑ 家族や大切な人と何気ない会話を楽しむ
☑ 翌朝のために、睡眠時間を大切にする
すべてを実践する必要はありません。今夜できそうなことを一つ選んでみてください。
トーチ――旅するように、季節を味わう。
次回は「実りの秋、食べる楽しみを大切に」。
秋は、米、野菜、果物、きのこなど、自然の恵みが豊かな季節です。食材が育った土地や季節に思いを馳せながら、食べることの楽しさと、日々の食卓を大切にする知恵について考えてみたいと思います。

