連載【甘さを足さない理由――果物本来の味を探す旅】 第4話
第4話 砂糖を加えるメリットと、その意味
「砂糖って、甘くするためだけに使うんじゃないんだ……」
彼女は、前回の話を思い出していた。
ドライフルーツの甘さは、果物そのものが持っている甘さ。
乾燥によって水分が減り、その味わいを強く感じることがある。
だから、砂糖を加えなくても甘く感じる。
では、そもそもなぜ食品には砂糖が加えられるのだろう。
彼女は、キッチンにある食品をいくつか見てみた。
ジャム。
お菓子。
シロップ漬けの果物。
焼き菓子。
いろいろな食品に砂糖が使われている。
「甘くするため……だよね?」
もちろん、それも理由の一つ。
でも、それだけではない。
食品加工において砂糖には、甘味をつける以外にも、さまざまな役割がある。
たとえば、ジャムを考えてみる。
果物を煮て、砂糖を加える。
すると、甘くなるだけではない。
砂糖は食品中の水分との関係にも影響し、保存性や食感に関わることがある。
また、焼き菓子なら、
「甘さ」
だけではなく、
焼き色や食感、しっとり感などにも関係してくる。
つまり、
砂糖は「甘くするためだけの材料」ではない。
食品をつくるうえで、いろいろな役割を持っている。
「じゃあ、砂糖を使うことには、ちゃんと意味があるんだ」
彼女は少し納得した。
そう。
だから、
「砂糖が入っている食品は悪い」
と考える必要はない。
食品には、それぞれの目的がある。
甘さを加えたい。
食感を整えたい。
製品としての品質をつくりたい。
保存性を高めたい。
そうした目的に応じて、原材料が選ばれている。
大切なのは、
「砂糖が入っているか、入っていないか」だけで食品を判断しないこと。
その砂糖が、
「何のために使われているのか」
を考えてみることだ。
では、ドライフルーツはどうだろう。
ここで、彼女は最初の疑問に戻った。
「果物そのものに甘さがあるなら……」
「わざわざ砂糖を加えなくてもいい場合もある?」
その通り。
果物そのものの甘さを味わうことを目的とするなら、
砂糖を加えずに仕上げる
という選択肢もある。
もちろん、砂糖を加えたドライフルーツにも、それならではの味わいや加工上の目的がある。
だから、どちらが絶対に正しいという話ではない。
ここで、トーチが大切にしている考え方がある。
それは、
「必要だから足す」のか。
それとも、
「素材だけでも十分だから、足さない」のか。
という違いだ。
これは、とても小さな違いに見える。
でも、商品を選ぶときには大きな意味を持つ。
たとえば、甘いブドウを思い浮かべてみる。
そのブドウには、もともと甘さがある。
乾燥すれば、水分が減って、その甘さを強く感じることがある。
そこにさらに砂糖を加える。
もちろん、それによって別の味わいをつくることはできる。
しかし、
「この果物そのものの味を知ってほしい」
という目的なら、
まずは、何も足さずに味わってもらう。
そんな考え方もできる。
彼女はドライフルーツを一粒つまんだ。
「なるほど……」
「砂糖を使わないことが目的なんじゃないんだ」
そう。
ここは、とても大切なところだった。
トーチが「砂糖不使用」を選ぶのは、
砂糖を悪者にしたいからではない。
砂糖には、食品加工における役割がある。
それを理解したうえで、
「今回の果物には、砂糖を加える必要があるだろうか?」
と考える。
そして、
「果物そのものの甘さを味わってもらいたい」
と判断した商品については、
「足さない」という選択をする。
食品を選ぶとき、
「何が入っているか」
を見ることは大切だ。
でも、その一歩先に、
「なぜ、それが入っているのか」
を考えてみる。
さらに、
「なぜ、それを入れなかったのか」
も考えてみる。
そうすると、「無添加」や「砂糖不使用」という言葉も、少し違って見えてくる。
単なる宣伝文句として見るのではなく、
「この商品は、何を大切にして作られているのだろう?」
と考えるきっかけになるからだ。
彼女は、商品の裏側にある原材料表示をもう一度見た。
「入っているものを見るだけじゃなくて……」
「入っていない理由まで考えてみるんだ」
食べものは、足し算だけではない。
何を加えるか。
何を加えないか。
どこまで素材を生かすか。
その一つひとつの選択が、最後の味につながっていく。
トーチが届けたいのは、
「砂糖不使用だから、絶対にこちらを選ぶべき」
という話ではない。
そうではなく、
「砂糖には、こういう役割がある」
「でも、この果物なら、その甘さをそのまま味わう方法もある」
ということを知ってもらいたい。
選択肢を知れば、自分の基準で食品を選べる。
それこそが、
「食べものを選ぶ力」
なのではないだろうか。
そして彼女は、もう一つ気になった。
「じゃあ……」
「食品添加物って、全部避けたほうがいいの?」
砂糖のことを調べてみると、
「加えることにも意味がある」
ということが分かった。
だとすれば、食品添加物も同じなのかもしれない。
「添加物」という言葉だけで、
良い。
悪い。
と決めつけていいのだろうか。
次回は、そこから一歩進んで、
「添加物は『悪』なのか?」
を考えてみる。
🍇 トーチの視点
砂糖には、甘味以外にも食品加工上のさまざまな役割があります。
だからトーチは、
「砂糖=悪」
とは考えていません。
大切なのは、
「なぜ加えるのか」
を知ること。
そして、果物そのものに十分な魅力があるなら、
「あえて足さない」
という選択をすること。
トーチが大切にしているのは、「砂糖不使用」という言葉そのものではなく、
素材を生かすために、何を足し、何を足さないのかを考える姿勢
なのです。
次回予告
第5話「添加物は『悪』なのか?」
「無添加だから安心」と簡単に決めつけない。
では、食品添加物とは、そもそも何のために使われているのでしょうか。
次回は、食品添加物を「善悪」ではなく、その役割から考えてみます。

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