連載【甘さを足さない理由――果物本来の味を探す旅】 第5話
第5話 添加物は「悪」なのか?
「砂糖には、ちゃんと役割があるんだ……」
彼女は、前回のことを思い出していた。
砂糖は、ただ食品を甘くするためだけに使われるわけではない。
食品の味や食感、保存性などに関わることもある。
だから、
「砂糖が入っている食品は悪い」
と決めつけるのは違う。
では――。
「添加物はどうなんだろう?」
彼女は、スーパーの食品売り場で立ち止まった。
食品の袋を見ると、原材料名の中に、見慣れない名前が並んでいることがある。
保存料。
酸化防止剤。
着色料。
香料。
増粘剤。
それぞれ、名前だけを見ると少し難しく感じる。
「添加物って、やっぱり避けたほうがいいのかな……」
そんな疑問を持つ人は、少なくないだろう。
彼女も、以前はそうだった。
「無添加」と書いてあると安心する。
反対に、添加物の名前がいくつも書いてあると、なんとなく不安になる。
でも、それだけで食品を判断していいのだろうか。
少し調べてみると、見方が変わった。
食品添加物は、食品をつくったり、保存したり、品質を保ったりするために、さまざまな目的で使われている。
たとえば、食品の品質を保つため。
見た目を整えるため。
食感を調整するため。
香りや味を整えるため。
食品を安定して製造するため。
つまり、
「添加物」という言葉そのものが、目的を表しているわけではない。
そこには、それぞれ違う役割がある。
彼女は、少し考えた。
「じゃあ……」
「添加物は悪者じゃないんだ?」
もちろん、
「だから何でも気にせず食べればいい」
という話でもない。
食品を選ぶときに、何が使われているのかを知ることは大切だ。
でも、
「添加物がある=悪い食品」
「無添加=必ず良い食品」
と、二つに分けてしまうと、かえって食品そのものが見えなくなる。
大切なのは、
「なぜ、この食品には、この成分が使われているのだろう?」
と考えることなのかもしれない。
たとえば、ある食品に保存性を高めるための成分が使われているとする。
それには、その食品を一定の品質で届けるという目的がある。
別の食品には、色や香りを整えるための成分が使われているかもしれない。
それなら、それにも商品としての目的がある。
つまり、
「入っている」ことだけを見るのではなく、「何のために入っているのか」を見る。
これが、食品を知るということなのだろう。
彼女は、ふとドライフルーツの袋を手に取った。
「じゃあ、この商品は?」
原材料表示を見る。
果物の名前だけ。
「これなら、果物そのものの味を確かめられそう」
そう思った。
でも、ここでも大切なのは、
「添加物がないから絶対に良い」
と考えることではない。
トーチがこの商品で大切にしているのは、
「果物そのものの味をできるだけそのまま感じてもらいたい」
ということだった。
だから、
砂糖を加えない。
余計な味を加えない。
素材の持つ甘さや香りを味わってもらう。
そういう選択をしている。
これは、添加物を否定する考え方とは少し違う。
たとえば、ある食品には添加物を使うことで品質を安定させることが必要かもしれない。
一方で、
「この果物は、そのままでも十分に魅力がある」
と考えるなら、
あえて何も加えない。
そんな選択もできる。
つまり、
「使う・使わない」より先に、「何を目指した食品なのか」を考える。
そこが大切なのだ。
彼女は、ドライフルーツを一粒口に入れた。
甘い。
でも、ただ甘いだけではない。
果物の香りがする。
少し酸味もある。
噛んでいると、果物らしい風味が広がる。
「これが、素材の味なんだ……」
これまで彼女は、
「何が入っているか」
ばかり気にしていた。
でも今は、
「何を入れずに、この味をつくっているのか」
という見方もできるようになった。
食品表示を見るとき、
原材料名を確認する。
添加物を確認する。
それは、とても大切な習慣だ。
でも、そこで終わらせない。
もう一歩踏み込んで、
「この商品は、何を大切にしているのだろう?」
と考えてみる。
素材を生かしたいのか。
味を安定させたいのか。
保存性を重視しているのか。
食感を大切にしているのか。
価格を抑えることを重視しているのか。
商品には、それぞれつくられた理由がある。
トーチが考える「自然派」も、単純なものではない。
「添加物があるからダメ」
「無添加だから良い」
という二択ではない。
そうではなく、
素材そのものの魅力を大切にする。
そのために、
「本当に何かを加える必要があるのか?」
と一度立ち止まって考える。
必要がなければ、足さない。
それが、トーチの「足さない」という考え方につながっている。
彼女は、食品売り場を歩きながら思った。
食品を選ぶというのは、
「良い・悪い」を決めることではないのかもしれない。
原材料を見る。
加工方法を知る。
素材を知る。
そして、
「自分は、何を大切にして食品を選びたいのか」
を考える。
その基準を持っていれば、
「無添加」という言葉だけに振り回されることもなくなる。
「添加物」という言葉だけで、必要以上に怖がることもなくなる。
そして、彼女には新しい疑問が生まれた。
「じゃあ……」
「自然派食品って、そもそも何なんだろう?」
無添加なら自然派?
砂糖不使用なら自然派?
国産なら自然派?
それとも、もっと別の考え方なのだろうか。
「自然派」という言葉は、便利だけれど、少し曖昧でもある。
だからこそ、一度立ち止まって考えてみたい。
次回は、
「自然派食品とは、いったい何を意味するのか?」
について考えてみる。
🍇 トーチの視点
食品添加物を、
「良い・悪い」だけで判断しない。
それぞれに、使われる理由があります。
だからこそトーチは、
「無添加だから良い」
という単純な伝え方はしません。
大切なのは、
何のために使われているのか。
そして、
何のために使わなかったのか。
その背景を知ることです。
トーチが「足さない」ことを大切にするのは、添加物を否定したいからではありません。
果物そのものの魅力を、できるだけそのまま味わってほしい。
そのために、必要のないものは足さない。
それが、トーチの考える「素材を生かす」ということです。
次回予告
第6話「自然派食品とは、何なのか?」
「無添加」「砂糖不使用」「国産」。
自然派食品を表す言葉はいろいろあります。
でも、本当に大切なのは、言葉そのものなのでしょうか。
次回は、「自然派」という言葉の中身を考えてみます。

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