BLOG & INFO

エッセイ

連載【一粒の値段――「高い」と言われたドライフルーツの秘密】 第7話

第7話 砂糖や添加物で味を作る方法との違い

「ねえ健一さん。このドライフルーツって、どうしてこんなに果物の味がするんだろう?」

美紀が袋から一粒取り出しながら尋ねた。

「それは、果物そのものの味を生かすことを大切にしているからじゃないかな」

「でも、ドライフルーツって、甘いものが多いよね?」

「そうだね。砂糖を加えたり、油を使ったり、いろいろな方法で食べやすく仕上げる商品もあるよ」

美紀は少し考えてから、一粒を口に入れた。

「じゃあ、ドライフルーツって、作り方によってかなり違うんだね」

「そう。実は“何を加えたか”を見るだけじゃなくて、“何を加えずに作ったか”を見るのも大切なんだ」


■「甘い=果物そのものの甘さ」とは限らない

ドライフルーツを食べて、

「甘くておいしい」

と感じることは多いでしょう。

ただ、その甘さがどこから来ているのかを考えたことはあるでしょうか。

果物そのものが持っている甘さなのか。

それとも、砂糖などを加えて作られた甘さなのか。

もちろん、砂糖などを使うこと自体が悪いわけではありません。

商品の目的や食べ方によって、さまざまな製法があります。

大切なのは、

「この商品は、何によって味を作っているのか」

を知ることです。

原材料表示を見れば、その違いを知ることができます。


■「足す」ことで味を作る方法

食品をおいしく仕上げるためには、さまざまな工夫があります。

砂糖を加えて甘さを調整する。

油を使って食感を整える。

保存性や色、風味などを考えて、食品添加物を使用する。

こうした方法によって、安定した味や食べやすさを実現する商品もあります。

つまり、

「何かを加える=悪い商品」ではありません。

食品には、それぞれの商品設計があります。

だからこそ、単純に

「無添加だから良い」

「添加物があるから悪い」

と決めつけるのではなく、

「その商品は、どんな考え方で作られているのか」

を見ることが大切なのです。


■一方で、「足さない」という選択もある

では、何も加えないことには、どんな意味があるのでしょうか。

例えば果物を乾燥させる場合、

「果物そのものの味を楽しんでもらいたい」

という考え方があります。

その場合、砂糖などを加えて甘さを作るのではなく、

果物がもともと持っている甘さや香りを生かす。

という方向になります。

これは、実は簡単なようで簡単ではありません。

砂糖を加えれば、甘さを一定の方向に整えることができます。

しかし、果物そのものを生かそうとすれば、原料となる果物の品質や状態が、より重要になります。

つまり、

「足さない」ということは、「何もしない」という意味ではない。

むしろ、素材そのものに向き合う必要があるのです。


■「何を加えたか」より「何を残したか」

美紀は、もう一度袋の表示を見た。

「なるほど……。今まで私は、ドライフルーツって“甘いお菓子”みたいに考えていたかもしれない」

「そういう商品もあるし、果物そのものを楽しむタイプの商品もある。どちらが正解ということじゃないんだよ」

「じゃあ、選ぶときはどうしたらいいの?」

「まず原材料を見ることだね」

美紀が袋の裏側を見る。

そこには、商品の材料が書かれている。

「原材料表示を見ると、“何が入っているのか”が分かるんだね」

「うん。そして、もう一つ大切なのが、“何を入れずに作っているのか”という視点なんだ」


■素材そのものを楽しむために

トーチが扱うドライフルーツも、そうした考え方の一つです。

砂糖や油などを加えて味を作るのではなく、果物そのものを生かすことを大切にしています。

だからこそ、原料となる果物が重要になります。

どんな品種なのか。

どこで育った果物なのか。

どんな状態の果物を使うのか。

そして、それをどのように加工するのか。

前回までの記事で見てきたように、ドライフルーツの価格は、完成した一袋だけを見て決まるものではありません。

原料となる果物。

旬の時期。

乾燥による重量の変化。

加工にかかる手間。

そして、

「素材の味をどう生かすか」という作り手の考え方。

そこまで含めて、一つの商品になっています。


■「高い」の中身を考えてみる

「砂糖が入っていないから高い」

「無添加だから高い」

それだけでは、本当の価格の理由にはなりません。

価格を見るときには、

何にお金がかかっているのか。

どんな素材を使っているのか。

どんな作り方をしているのか。

何を加えて、何を加えずに仕上げているのか。

そこまで見ていく必要があります。

「高いから良い」のではありません。

反対に、

「安いからお得」とも限りません。

大切なのは、その価格に納得できる理由があるかどうかです。


■美紀が気づいた「一粒の価値」

「なんだか、ドライフルーツを見る目が変わってきた」

美紀が笑った。

「前は、一袋の値段と量しか見ていなかったけど……」

「今は?」

「何が入っているのか。そして、どうやってこの味になっているのかを見るようになりそう」

健一も頷いた。

「それが分かると、“高いか安いか”だけじゃなく、“自分にとって納得できる商品か”で選べるようになるよ」

美紀は手のひらに残った最後の一粒を見つめた。

小さな一粒。

けれど、その中には、

果物を育てた時間。

旬の一瞬。

加工する手間。

そして、素材を生かそうとする考え方が詰まっている。

「一粒って、小さいけど……意外と奥が深いね」

「そうなんだよ」


今回のポイント

  • ドライフルーツには、さまざまな製法がある
  • 砂糖や添加物を使うことが、必ずしも悪いわけではない
  • 商品を選ぶときは「何を加えたか」を原材料表示で確認する
  • 同時に「何を加えず、素材そのものを生かしているか」という視点も大切
  • 「高い=良い」「安い=お得」と決めつけず、価格の中身を見る
  • 一粒の価値は、完成品の量だけでは判断できない

ドライフルーツの値段を考えるとき、

「何が入っているのか?」

だけではなく、

「何を入れずに、果物そのものを生かしているのか?」

という視点を持ってみる。

それだけでも、同じドライフルーツの見え方は、少し変わってくるかもしれません。

次回、第8話「大量生産品とこだわりの商品は何が違う?」へ続く。


プライバシーポリシー / 特定商取引法に基づく表記 / 利用規約

Copyright © 2025 酒井 恒和 All Rights Reserved.

CLOSE