連載【甘さを足さない理由――果物本来の味を探す旅】 第2話
第2話 果物には、もともと甘さがある
「どうして、乾燥するとあんなに甘く感じるんだろう?」
前回、彼女はドライフルーツを食べながら、そんな疑問を持った。
砂糖は入っていない。
それなのに、しっかり甘い。
考えてみれば、不思議な話である。
「そもそも……」
彼女はスーパーの果物売り場で立ち止まった。
「果物って、どうして甘いんだろう?」
リンゴ。
ブドウ。
桃。
柿。
みかん。
いちご。
思い浮かべてみると、どれも甘さを持っている。
もちろん、酸味が強い果物もある。
品種や収穫時期によって、味わいも違う。
それでも、多くの果物には、
「甘い」と感じる味わいが、もともと備わっている。
私たちが「甘い」と感じる大きな理由の一つは、果物に糖類が含まれているからだ。
果物に含まれる糖類には、果糖やブドウ糖、ショ糖などがある。
ただし、すべての果物が同じ糖の構成をしているわけではない。
だから、
「果物は全部同じ甘さ」
ではない。
同じブドウでも、品種によって甘さや酸味が違う。
同じ品種でも、育った環境や収穫時期などによって味わいが変わる。
そこに、果物の面白さがある。
彼女は、店頭に並んだブドウを手に取った。
「そういえば……」
子どもの頃、初めて甘いブドウを食べたとき。
「なんでこんなに甘いんだろう」
と、不思議に思ったことがあった。
でも、大人になると、それを当たり前のこととして受け入れている。
「ブドウだから甘い」
それだけで終わってしまう。
けれど、少し立ち止まって考えてみる。
砂糖を加えなくても甘い。
それなら、
「その甘さを、わざわざ外から足す必要はあるのだろうか?」
そんな疑問が出てくる。
もちろん、砂糖を加えること自体が悪いわけではない。
食品加工において砂糖には、甘味をつけるだけではなく、さまざまな役割がある。
商品によっては、砂糖を加えることで目指す味わいや品質をつくっている。
だから、
「砂糖を使っている食品は悪い」
という単純な話ではない。
大切なのは、
その食品が、何を目的に、何を加えて作られているのか。
そして、
自分は何を選びたいのか。
そこを知ることだと思う。
トーチがドライフルーツを選ぶときに考えているのも、そこだった。
「甘くするために、何かを加えよう」
ではなく、
「果物がもともと持っている甘さを、まず味わってもらおう」
という考え方。
もちろん、乾燥すればすべての果物が同じように甘く感じられるわけではない。
果物の品種。
熟度。
原料の状態。
乾燥方法。
さまざまな条件によって、仕上がりは変わる。
だからこそ、
素材そのものが大切になる。
彼女は、もう一度ドライフルーツを一粒口に入れた。
噛む。
ゆっくり味わう。
「……これ、砂糖の甘さじゃないんだ」
そう思うと、さっきまでとは少し違った味に感じられた。
甘さだけではない。
果物の香り。
酸味。
皮の風味。
噛んだときの食感。
生の果物を食べるときには気づかなかったものまで、少しずつ感じられる。
一粒の中に、
「もともと、この果物が持っていたもの」
が残っているように思えた。
私たちは食品を選ぶとき、
「何が入っているか」
を見ることが多い。
それは、とても大切なことだ。
でも、もう一つ、
「もともと何があったのか」
を見る方法もある。
砂糖を加えたから甘いのか。
それとも、果物自身が持っていた甘さなのか。
加工によって、どんな味になったのか。
素材の個性は残っているのか。
こうしたことを知っていくと、食品表示を見る目も少し変わってくる。
トーチが大切にしたいのは、
「砂糖不使用」という言葉だけではない。
その言葉の先にある、
「果物本来の味を知ること」
である。
何かを足して、分かりやすい味をつくる。
それも食品加工の一つの方法。
一方で、
できるだけ素材そのものの味を生かす。
それもまた、一つの選択肢。
どちらが正解ということではない。
だからこそ、選ぶ側が知っておく。
そのうえで、自分の食生活に合うものを選ぶ。
それが、トーチが考える「食べものを選ぶ」ということだ。
そして彼女は、前回から気になっていたことを思い出した。
「でも……」
「果物に甘さがあることは分かったけど、どうしてドライフルーツになると、生の果物よりずっと甘く感じるんだろう?」
確かに、同じ果物なのに。
生のときと、乾燥したときでは、甘さの感じ方が違う。
その答えを知るには、
「水分」について考える必要がある。
果物から水分が抜けると、一体何が起こるのか。
次回は、いよいよ、
「乾燥すると甘く感じるのはなぜ?」
という、第1話から続いていた疑問に迫ります。
🍇 トーチの視点
果物の甘さは、砂糖を加えて初めて生まれるものではありません。
果物には、もともとその果物自身の甘さがあります。
だからこそトーチでは、
「何を足したか」だけではなく、
「素材がもともと何を持っているのか」
にも目を向けています。
食べものを知る。
素材を知る。
そして、自分で選ぶ。
その積み重ねが、毎日の食事を少し豊かにしてくれるのではないでしょうか。
次回予告
第3話「乾燥すると甘く感じるのはなぜ?」
同じ果物なのに、生で食べるときとドライフルーツでは甘さの感じ方が違う。
その秘密は、果物の中にある「水分」にありました。

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