連載【一粒の果実が教えてくれたこと】 第7話
第7話 「シャインマスカット」は、なぜ人気なのか?
「ナガノパープルのことは、だいぶ分かってきたね」
夕食後、美紀が言った。
「うん。でも、もう一つある」
健一がパソコンの画面を指差す。
そこには、鮮やかな緑色のブドウが映っていた。
シャインマスカット。
「同じブドウなのに、ナガノパープルとはずいぶん見た目が違うね」
「そうだな」
ナガノパープルは濃い紫色。
シャインマスカットは黄緑色。
同じ「ブドウ」という果物なのに、見た目からして大きく違う。
「でも、どうしてトーチは、この二つをドライフルーツにしているんだろう?」
健一は、また一つ疑問を持った。
シャインマスカットという名前
まず二人は、シャインマスカットについて調べてみた。
シャインマスカットは、日本で育成されたブドウの品種だ。
特徴の一つは、皮ごと食べやすいこと。
そして、マスカット系の香りを持ち、甘みのある味わいが特徴として知られている。
「だから人気があるのかな」
美紀が言った。
「皮をむかなくても食べやすいし、香りもある」
「それに、見た目もきれいだよな」
黄緑色の大きな粒。
房になった姿も華やかだ。
生のシャインマスカットは、贈答品としても利用されることがある。
「確かに、『高級なブドウ』っていうイメージがある」
美紀が言った。
しかし、健一はそこで立ち止まった。
「でも、人気があるからドライフルーツに向いている、とは限らないよな」
「そうだね」
ここでも、第4話で学んだことが出てきた。
生で人気があることと、加工品として価値があることは、同じではない。
「皮ごと食べられる」という特徴
健一は、シャインマスカットの写真を拡大した。
「ナガノパープルも皮ごと食べられたよね」
「そう」
「シャインマスカットも皮ごと食べられる」
二つのブドウには、共通する特徴があった。
それが、皮ごと食べやすいこと。
「じゃあ、ドライフルーツにしたときも、この特徴が関係するのかな?」
「どうだろう?」
二人は考えた。
ドライフルーツは、生の果物より水分が少ない。
そのため、乾燥によって皮や果肉の食感も変わる。
生の状態では気にならなかった部分が、乾燥すると違った食感として感じられることもある。
だからこそ、
「皮ごと食べられる果物だから、そのまま乾燥させればいい」
という単純な話ではない。
原料の特徴を理解したうえで、どのように加工するかが重要になる。
健一はうなずいた。
「やっぱり、原料と加工はセットなんだな」
甘いだけではない「香り」
次に二人が注目したのは、シャインマスカットの香りだった。
「そういえば、シャインマスカットって、香りが特徴的だよね」
美紀が言った。
「うん。食べる前から香りがする」
生のシャインマスカットを食べると、甘さだけではなく、独特の香りを感じる。
ここで健一は、第3話を思い出した。
「甘さの話をしたけど、果物の魅力って甘さだけじゃないんだよな」
甘味。
酸味。
香り。
食感。
色。
それぞれが組み合わさって、果物の個性になる。
「だから、品種を知ることが大切なんだ」
美紀が言った。
同じブドウでも、
ナガノパープルにはナガノパープルの特徴。
シャインマスカットにはシャインマスカットの特徴。
その個性を知らなければ、なぜその品種が選ばれているのかも分からない。
生のシャインマスカットを乾燥させる意味
「でも、やっぱりここが気になる」
健一が言った。
「シャインマスカットって、生で食べるのがすごく美味しいだろ」
「うん」
「それを、どうしてドライフルーツにするんだろう?」
二人は、実際に生のシャインマスカットを食べてみた。
パリッ。
皮ごと噛む。
果汁が広がる。
甘さの中に、独特の香りがある。
「これは確かに、生で食べる価値があるね」
美紀が笑った。
「じゃあ、これを乾燥させたらどうなるんだろう?」
その疑問を確かめるように、二人はドライフルーツも食べてみた。
生とは違う。
水分が少ない。
柔らかさも違う。
そして、噛むほどに味を感じる。
「同じブドウなのに、別の食べ物みたい」
「でも、ちゃんとシャインマスカットの感じがある」
健一は、そこにドライフルーツの面白さを感じた。
「生」と「乾燥」は、競争ではない
ここで美紀が言った。
「でも、どっちが美味しいかって聞かれたら困るね」
「そうだな」
生のシャインマスカットには、生の良さがある。
みずみずしさ。
果汁。
パリッとした食感。
華やかな香り。
一方、ドライフルーツには別の良さがある。
持ち運びやすい。
水分が少ない。
噛むことで味わいを楽しめる。
少量でも果物の味を感じやすい。
「つまり、同じ果物でも使う場面が違うんだ」
健一が言った。
「生のシャインマスカットを、ドライフルーツにして『代用品』にするんじゃない」
「うん」
「別の楽しみ方を作るんだ」
これは、今回の大きなポイントだった。
ドライフルーツは、生の果物の代用品ではない。
生の果物には生の価値がある。
乾燥させた果物には、乾燥させた果物の価値がある。
「高級だから価値がある」ではない
健一は少し考えた。
「シャインマスカットって高級なイメージがあるけど……」
「うん」
「高級だからドライフルーツとして価値がある、って考えるのも違うよな」
美紀がうなずく。
「そうだね」
価格や知名度だけでは、商品の価値は決まらない。
大切なのは、
その原料の特徴を、加工品としてどう活かしているのか。
シャインマスカットなら、
皮ごと食べやすい。
甘みがある。
香りが特徴的。
そうした品種の個性がある。
そして、その個性をドライフルーツという形でどう表現するのか。
そこを見る必要がある。
「結局、名前だけじゃなくて中身を見るんだな」
健一が言った。
「そういうことだね」
ナガノパープルとシャインマスカット
二人は、ここで初めて二つのブドウを並べて考えてみた。
ナガノパープル
濃い紫色。
皮ごと食べやすい。
長野県で育成された品種。
シャインマスカット
黄緑色。
皮ごと食べやすい。
甘みと特徴的な香りを持つ品種。
「同じブドウでも、個性が違うね」
美紀が言った。
「だから、食べ比べる意味があるんだ」
健一も答えた。
同じ加工方法で作ったとしても、原料となる品種が違えば、味わいは同じにはならない。
つまり、
ドライフルーツの個性は、乾燥工程だけで生まれるものではない。
原料となる果物の個性が、出発点にある。
「何を食べているのか」を知る
その日の夜。
健一は、トーチの商品ページを開いた。
今までなら、
「ドライフルーツだから、果物を乾燥させたもの」
と考えて終わっていた。
しかし今は違う。
「ナガノパープルを使っている」
「シャインマスカットを使っている」
という情報が、商品の意味を持って見えるようになった。
「商品名って、単なる名前じゃないんだな」
健一が言った。
「その商品が何なのかを知る入口なんだね」
美紀が答えた。
原材料を見る。
品種を見る。
産地を見る。
加工方法を見る。
そうすれば、その商品がどんな考え方で作られているのかが少しずつ分かってくる。
二つのブドウを食べ比べてみよう
「ねえ」
美紀が言った。
「次は、本当に食べ比べてみない?」
「ナガノパープルとシャインマスカット?」
「そう」
健一も賛成した。
「生の状態とドライの状態、両方比べたら面白そうだ」
同じブドウでも、品種が違う。
そして、同じ品種でも、生と乾燥では違う。
こうして考えてみると、
「果物を食べる」
という一見単純な行為の中にも、いろいろな違いがある。
品種。
産地。
季節。
加工方法。
食べる場面。
それらを知ることで、ただ「甘い」「美味しい」で終わらなくなる。
一粒の味を、背景まで考えてみる
健一はドライフルーツを一粒、手のひらに乗せた。
「この一粒も、シャインマスカットだったんだよな」
「そう」
「そう考えると、ちょっと面白いな」
一粒のドライフルーツ。
その前には、一房のブドウがある。
その前には、一本のブドウの木がある。
その木が育つ土地がある。
季節がある。
そして、その果実を育てる人がいる。
その果物を選び、加工する人がいる。
一粒の価値は、袋の中だけでは完結していない。
原料を知ることで、商品の価値が見えてくる。
第6話ではナガノパープル。
第7話ではシャインマスカット。
二つの品種を知ったことで、健一はようやく「トーチがなぜこの二つを選んでいるのか」という疑問の入口に立った。
次に知りたいこと
「でも、まだ分からないことがある」
健一が言った。
「何?」
「ナガノパープルもシャインマスカットも、生で食べると美味しい」
「うん」
「じゃあ、その美味しさを、どうやってドライフルーツに残すんだろう?」
美紀も黙って考えた。
ここから先は、品種の話だけではない。
加工の話になる。
果物をどう乾燥させるのか。
温度は?
時間は?
水分はどこまで抜くのか?
そして、素材の味をどう活かすのか?
「原料が分かったら、今度は加工を知る番だね」
美紀が言った。
健一はうなずいた。
「うん。ここからが、本当の意味で『ドライフルーツの作り方』だ」
一粒の果実が、どうやって一粒のドライフルーツになるのか。
次回は、その秘密に近づいていく。
――第8話へ続く。

ドライフルーツ ご家庭用 種なし ナガノパープル 【500g】 豊かな風味を持つ「ナガノパープル」、長野県の選りすぐりのブドウを使用した、種のない食べやすい品種です。しっかりとした甘みと香りが特徴で、フレッシュな状態でお届けします。家庭で手軽に楽しめるこのナガノパープルは、健康志向の方にもぴったりな商品です。 長野県の果樹試験場で育成され、2004年に品種登録された『種が無く皮ごと食べられるぶどう』。 巨峰にも劣らない濃厚な甘さと、爽やかな酸味も持ち合わせ近年人気が高まっていま…
ご家庭用 種なし シャインマスカット 【500g】 「砂糖も添加物もいらない、シャインマスカットの贅沢。」 「長野の太陽と大地が育んだ、極上のドライフルーツ。」 「長野県産シャインマスカットを無添加・砂糖不使用で乾燥。自然な甘みと香りを凝縮した贅沢なドライフルーツ。おやつやギフトに。」 特別な贈り物には、果実そのものの美味しさを届ける一品を。 長野の澄んだ空気と日差しのもと育ったシャインマスカットを、 砂糖や添加物を一切加えず、ゆっくりと乾燥。 自然が生み出した甘さと香り…



