連載小説《気の森の記録》─失われた循環の謎─ [3/7] | トーチ

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連載小説《気の森の記録》─失われた循環の謎─ [3/7]

【三日目】第三章 黒い森茸の痕跡

森の奥へ進むにつれ、空気はさらに薄く、静寂が深まっていった。
鳥の声すら聞こえない。
蒼が立ち止まり、地面を指さした。
「ここ、見てください」
そこには、黒い茸が生えていたであろう“跡”があった。
丸い形に土が沈み、周囲の苔がわずかに黒ずんでいる。
灯はしゃがみ込み、指でそっと触れた。
「……温かい?」
蒼もうなずく。
「黒い森茸は、森の“気”を吸って育つと言われています。
だから、森が弱ると真っ先に姿を消すんです」
灯は祖母の言葉を思い出した。

灯は蒼に尋ねた。
「森が弱った原因は分かっているの?」
蒼は少し言いにくそうに答えた。
「村の生活が変わったことが大きいと思います。
加工食品が増え、自然のものを使う人が減り……
森と人の循環が途切れたんです」
灯は胸が痛んだ。
祖母が守ろうとしたものが、静かに失われていく。
そのとき、風が吹き、どこからか微かな香りが漂ってきた。
灯は顔を上げた。
「……この香り、覚えてる。
子どもの頃、森の奥で嗅いだ香りだ」
蒼は目を細めた。
「まだ、森茸が残っているのかもしれません。
行きましょう」
二人は香りのする方へ歩き出した。
森の奥で、何かが呼んでいる。

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