連載小説《気の森の記録》─失われた循環の謎─ [1/7] | トーチ

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連載小説《気の森の記録》─失われた循環の謎─ [1/7]

【一日目】第一章 黒い森の呼び声

長野県の山奥に、地元の人々が「気の森」と呼ぶ場所がある。
古くから“気を養う草”が自生すると言われ、村人たちはその森を畏れ、同時に敬ってきた。
東京での仕事に疲れ果てた研究者・相良灯(さがら あかり)は、祖母の遺品整理のため、十数年ぶりに故郷の白霧村へ戻ってきた。
祖母は生前、薬草師として知られ、村の人々から深く信頼されていた。
灯が古い家の倉庫を整理していると、埃をかぶった木箱が目に入った。
蓋を開けると、そこには一冊の手帳が入っていた。
表紙には、祖母の筆跡でこう書かれていた。
『気の森調査記録──循環が途切れる前に』
灯は胸騒ぎを覚えた。
ページをめくると、奇妙な記述が続いていた。

灯は眉をひそめた。
祖母は迷信深い人ではなかった。
科学的な視点を持ち、薬草の成分分析まで行う人だった。
その祖母が「気」や「循環」という曖昧な言葉を使うとは。
さらに読み進めると、最後のページにこうあった。

灯は手帳を閉じ、深く息を吸った。
祖母が残した謎。
村に漂う、どこか沈んだ空気。
そして、気の森に眠る“黒い茸”。
灯は決意した。
「明日、森へ行こう」
その夜、灯は奇妙な夢を見た。
黒い森の奥で、何かが静かに呼んでいる。
まるで、灯の帰りを待っていたかのように。

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