連載【一粒の余白――忙しい毎日に果物を取り戻す】 第2話
第2話 「忙しいから食べられない」という問題
「果物を食べたい」
そう思っている人は、意外と多いのではないだろうか。
健康のためにも、季節を感じるためにも、できれば毎日の食卓に果物を取り入れたい。
けれど、実際の生活はそう簡単ではない。
朝は時間がない。
仕事に出かける準備をして、家族の支度をして、自分の身支度を整える。
朝食を済ませたら、もう出発の時間。
果物を食べようと思っても、
「今日はいいか」
となってしまう。
昼になれば、仕事の真っ最中。
お弁当や昼食を急いで済ませ、午後の仕事へ戻る。
そして夕方。
ようやく仕事が終わっても、今度は買い物や夕食の準備が待っている。
帰宅してから果物を食べることを思い出しても、
「今日はもう疲れたからいいや」
となる。
こうして、一日が終わる。
そして翌日も同じことを繰り返す。
気がつけば、
「果物を食べたい」
と思いながら、何日も食べていない。
これは、果物が嫌いだからではない。
健康への関心がないからでもない。
「食べるまでに、少し手間がかかる」
ということも、大きな理由の一つなのだと思う。
もちろん、果物を食べること自体は難しくない。
りんごなら切ればいい。
みかんなら皮をむけばいい。
ぶどうなら洗えばいい。
それだけのことだ。
けれど、忙しい毎日の中では、その「それだけ」が意外と大きい。
買ってくる。
洗う。
切る。
皮をむく。
食べる。
残ったら冷蔵庫へ戻す。
食べ頃も気にする。
傷んでいないか確認する。
一つ一つは小さな作業だ。
しかし、忙しい生活では、小さな手間が積み重なる。
だから、
「果物を食べること」
が、いつの間にか「わざわざ時間をつくってすること」になってしまう。
そして、もっと簡単なものに手が伸びる。
袋を開ければ食べられるもの。
すぐ口にできるもの。
仕事をしながらでも食べられるもの。
移動中でも持ち歩けるもの。
これは、忙しい現代の生活では自然なことなのかもしれない。
だからといって、
「忙しい人は食生活を大切にできない」
ということではない。
むしろ逆だ。
忙しいからこそ、
「続けられる方法」を選ぶことが大切なのではないだろうか。
毎日完璧な食事をつくる。
毎朝必ず果物を切る。
毎日決まった時間に健康的なものを食べる。
そんな理想を掲げても、生活が忙しくなれば続かなくなる。
大切なのは、
「できる日だけ頑張る」
ことではなく、
「忙しい日でもできる形にする」
ことなのだと思う。
そこで思い出したいのが、昔から人が行ってきた「乾かす」という知恵だ。
果物を乾燥させる。
水分を抜く。
姿を変える。
そうすることで、持ち運びやすくなり、保存もしやすくなる。
生の果物とは違った形で、果物を楽しめるようになる。
これは、現代の忙しい生活にも、意外と相性がいい。
朝、時間がないとき。
仕事の合間に少し何か食べたいとき。
外出するとき。
旅行に出かけるとき。
冷蔵庫の中を気にせず、少しだけ果物を楽しみたいとき。
そんな場面では、
「果物を食べる」という選択肢を、もう少し身近にできるかもしれない。
もちろん、ドライフルーツが生の果物の代わりになるわけではない。
生の果物には、生の果物にしかないみずみずしさや食感がある。
だからこそ、両方を知っておきたい。
生で楽しむ日があってもいい。
乾燥させた果物を楽しむ日があってもいい。
大切なのは、
自分の生活に合わせて、果物との付き合い方を選べること。
健康的な食生活というと、つい「何を食べるべきか」に目が向く。
けれど、本当に大切なのは、
「無理なく続けられるか」
なのかもしれない。
食生活は、一日だけ頑張って完成するものではない。
毎日の小さな選択が、少しずつ積み重なっていくものだからだ。
「今日は果物を食べる時間がない」
そんな日があってもいい。
でも、
「だから、果物とは無縁」
にしてしまう必要もない。
ほんの少しでも、果物を楽しめる方法がある。
そう思えるだけで、食生活の選択肢は広がる。
忙しい毎日に必要なのは、
「もっと頑張ること」
ではなく、
「無理なく続けられる形を見つけること」
なのかもしれない。
一日の中に、ほんの少し果物を取り入れる。
その小さな習慣が、忙しい暮らしの中に新しい余白をつくってくれる。
第1話では、
「最近、果物を食べていない」
という気づきから始まった。
そして第2話では、その理由を考えてみた。
次は、
「生の果物には、生の果物だからこそできることがある」
というところから、もう一歩先へ進んでみたい。
果物を「食べること」だけではなく、
「楽しむこと」
について考えてみよう。
トーチの視点
果物を食べることを、特別な健康習慣にしたくはありません。
忙しい日でも、無理なく楽しめる。
時間がある日は生の果物を楽しみ、忙しい日はドライフルーツを選ぶ。
そんなふうに、自分の暮らしに合わせて選べることが大切だと考えています。
トーチが届けたいのは、健康のために我慢する食生活ではありません。
「食べることを楽しみながら、暮らしを少し整える」
そのための選択肢です。
次回予告
第3話「生の果物には、生の果物の良さがある」
みずみずしさ、香り、食感、旬の味。
ドライフルーツと比べることで見えてくる、
「生の果物だからこそ楽しめる価値」を考えます。

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