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日曜日企画 エッセイ

【日曜日企画】心と身体が喜ぶ暮らし ①⑩

第1シリーズ 「四季を楽しむ健康歳時記」

第10話 冬至にかぼちゃを食べる理由
  ――寒い冬を元気に過ごす、昔からの知恵

こんにちは。
「心と身体がよろこぶ暮らし」、トーチです。

秋が終わり、冬が深まってくると、日が暮れるのがずいぶん早くなります。

夕方5時を過ぎるころには、もう外は薄暗い。

朝もなかなか明るくならない。

そんな季節の中で、一年の大きな節目を迎えます。

冬至です。

一年の中で、昼が最も短く、夜が最も長い日。

昔の日本人にとって、冬至は単なるカレンダー上の日ではありませんでした。

寒さが厳しくなり、日照時間も短くなるこの時期を、どう元気に過ごすか。

そのためのさまざまな知恵が、昔から受け継がれてきました。

その代表的なものが、

「冬至にかぼちゃを食べる」

という習慣です。

なぜ、冬至にかぼちゃなのでしょうか。

今回は、そんな素朴な疑問から、日本人の季節の暮らしを眺めてみたいと思います。

冬至は、一年の「折り返し地点」

冬至の日を過ぎると、少しずつ昼が長くなっていきます。

冬至の日にはまだ寒さの真っただ中ですが、太陽の出ている時間は、ここから少しずつ増えていきます。

昔の人は、この変化をとても大切にしていました。

太陽が戻ってくる。

日が長くなっていく。

暗い時間が少しずつ短くなる。

そんな冬至は、長い冬の中にある一つの希望のような日でもあったのでしょう。

現在の私たちは、時計やカレンダーで季節を知ることができます。

しかし昔は、太陽や月、自然の変化そのものが暮らしの目印でした。

冬至もまた、自然のリズムを感じる大切な節目だったのです。

なぜ「かぼちゃ」なのか?

では、なぜ冬至にかぼちゃなのでしょう。

かぼちゃは、夏から秋に収穫される野菜です。

普通に考えれば、冬至のころには旬を過ぎています。

それなのに、なぜ冬に食べるのでしょうか。

そこには、昔の人の「保存」の知恵があります。

かぼちゃは、収穫した後もしばらく保存することができます。

冷蔵庫がなかった時代でも、適切な環境で保存しておけば、冬まで食べることができました。

つまり、

夏から秋に収穫したものを、冬の食卓まで大切に残しておく。

かぼちゃは、そんな昔の保存食文化とも深く関わっています。

今のように一年中、好きな野菜を買える時代ではありません。

だからこそ、収穫できる時期に採り、保存し、食べ物の少なくなる季節にいただく。

そこには、自然と共に暮らしてきた人々の知恵がありました。

「旬」は、必ずしも収穫時期だけではない

第8話では「夏野菜の知恵」について取り上げました。

トマト、きゅうり、なす、とうもろこし。

夏に採れるものを、夏に味わう。

それが「旬を食べる」という考え方でした。

一方、かぼちゃは少し違います。

収穫そのものは夏から秋ですが、保存することで冬の食卓に登場します。

つまり、

「採れたときに食べる」だけが、季節の食べ方ではない。

ということです。

保存する。

熟成させる。

干す。

漬ける。

昔の日本には、季節の恵みを長く楽しむためのさまざまな知恵がありました。

食べ物を無駄にせず、次の季節へつないでいく。

これは、今の私たちが改めて見直してもよい知恵ではないでしょうか。

冬至には「ん」のつく食べ物?

冬至には、かぼちゃ以外にも面白い習慣があります。

昔から、

「ん」のつく食べ物を食べると運がつく

という言葉遊びのような風習があります。

かぼちゃは別名「なんきん」とも呼ばれます。

「なんきん」には「ん」が二つ。

ほかにも、

れんこん。

にんじん。

ぎんなん。

うどん。

などがあります。

もちろん、これを食べれば運がよくなると科学的に証明されているわけではありません。

でも、こうした言葉遊びを食卓に取り入れることで、家族みんなが季節の行事を楽しむ。

そこに昔の暮らしの面白さがあります。

健康だけを考えて食事をするのではなく、

「今日は冬至だから、かぼちゃを食べよう」

「今年は“ん”のつくものを探してみよう」

そんな会話が生まれる。

食卓には、栄養だけではない役割もあるのです。

かぼちゃは、冬の食卓にちょうどいい

冬至のかぼちゃ料理といえば、煮物を思い浮かべる人も多いでしょう。

かぼちゃの煮物。

かぼちゃの味噌汁。

かぼちゃのスープ。

小豆と一緒に煮る「いとこ煮」など、地域によってさまざまな食べ方があります。

甘みのあるかぼちゃは、子どもにも食べやすい野菜です。

また、冬の寒い日に温かい料理としていただけば、食卓も自然とほっとするものになります。

特別な料理を作らなくてもいい。

いつもの食卓に、かぼちゃを一品加える。

それだけで「今日は冬至だね」と季節を感じることができます。

冬至には、もう一つの風習がある

冬至といえば、かぼちゃと並んでもう一つ有名なのが、

ゆず湯です。

冬至の日に、湯船にゆずを浮かべる。

浴室にゆずの香りが広がると、それだけでいつものお風呂が少し特別になります。

ゆず湯には、冬至の時期に身体を温めて無病息災を願うという、昔からの風習があります。

ここでも大切なのは、「ゆず湯に入れば病気にならない」ということではありません。

寒い季節に、ゆっくりお風呂に入り、身体を温める。

そして、

「今年も元気に冬を越せますように」

と願う。

そんな時間そのものに意味があるのではないでしょうか。

行事は、健康のためだけにあるのではない

健康を意識すると、

「何を食べればいいのか」

「何をすれば健康になるのか」

と考えてしまいます。

もちろん、それも大切です。

でも、日本の昔ながらの行事を見ていると、少し違った健康の考え方が見えてきます。

季節を感じる。

旬のものを食べる。

家族で食卓を囲む。

お風呂で温まる。

一年を振り返る。

そして、これからの季節を無事に過ごせるよう願う。

こうした一連の行動そのものが、暮らしを整える役割を果たしていたのかもしれません。

健康とは、身体だけの問題ではありません。

毎日の暮らしをどう過ごすか。

その中に健康があります。

「季節の行事」が暮らしに区切りをつくる

現代の生活では、毎日が忙しく過ぎていきます。

仕事をして、家事をして、スマートフォンを見て、眠る。

気がつけば一週間。

気がつけば一か月。

そんなことも珍しくありません。

だからこそ、季節の行事があることには意味があります。

十五夜が来た。

冬至が来た。

節分が来た。

ひな祭りが来た。

行事があると、

「もうこんな季節なんだ」

と、一度立ち止まることができます。

冬至にかぼちゃを食べることも、その一つです。

かぼちゃを食べることそのものだけではなく、

「今日は冬至だ」と季節を感じること。

それが、暮らしに小さな区切りをつくってくれます。

昔の知恵は、今の暮らしにも使える

昔の生活と今の生活では、大きく違うところがあります。

冷蔵庫があります。

スーパーがあります。

暖房があります。

一年中、さまざまな食品を買うことができます。

だからといって、昔の知恵が必要なくなったわけではありません。

むしろ、便利になった今だからこそ、

「季節を感じる」

「食べ物を大切にする」

「旬を楽しむ」

「家族と食卓を囲む」

という考え方を、もう一度取り入れてみてもよいのではないでしょうか。

昔のやり方をそのまま再現する必要はありません。

今の暮らしに合う形で、少しだけ取り入れてみる。

それで十分です。

今週のトーチの暮らしメモ

今年の冬至には、こんな過ごし方はいかがでしょう。

□ かぼちゃを一品、食卓に加える

□ 「ん」のつく食べ物を探してみる

□ ゆず湯を楽しむ

□ 夜空を見上げて、冬至を感じる

□ 「今年も元気に過ごせますように」と願う

どれも難しいことではありません。

かぼちゃの煮物を作るだけでもいい。

ゆずを一つ、お風呂に浮かべるだけでもいい。

大切なのは、季節の節目に気づくことです。

おわりに

冬至は、一年で最も夜が長い日です。

けれど、その日を境に、少しずつ昼の時間が長くなっていきます。

暗い冬の中にも、少しずつ春へ向かう変化が始まる。

そう考えると、冬至という日は、どこか前向きな節目にも感じられます。

かぼちゃを食べる。

ゆず湯に入る。

温かいものをいただく。

家族と話す。

そして、

「今年も元気に過ごせますように」

と願う。

昔の人が続けてきたこうした習慣には、医学的な効果を求めるだけでは説明できない、暮らしの豊かさがあります。

健康は、特別なことを毎日頑張ることだけではありません。

季節を感じる。

食べることを楽しむ。

身体をいたわる。

家族との時間を大切にする。

そんな小さな積み重ねの中にも、健康な暮らしがあります。

今年の冬至は、かぼちゃを食卓に並べてみませんか。

そして、ゆずの香りに包まれながら、一年を少し振り返ってみてください。

「今年も、よく頑張ったな」

そんな一言が、自分自身への小さな労いになるかもしれません。

冬至を過ぎれば、少しずつ日が長くなります。

寒い冬の先には、また春がやってきます。

季節を感じながら、無理をせず、一日一日を大切に。

それもまた、「心と身体がよろこぶ暮らし」なのだと思います。

トーチ――旅するように、季節を味わう。

次回は、第1シリーズの締めくくりとして、これまでの一年を振り返りながら「一年を健康に過ごす知恵」についてお届けします。

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