『日本の食材の知られざる旅路』(6/12) | トーチ

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『日本の食材の知られざる旅路』(6/12)

第6回:気候変動が食材に与える静かな影響

食材の旅路は、自然環境と人間の営みの積み重ねによって形づくられてきた。
しかし近年、その旅路に“静かな変化”が起きている。
気温の上昇、降水パターンの変化、海水温の上昇。
これらは、食材の味・栄養・生産量に少しずつ影響を与えている。
気候変動という言葉は大きく聞こえるが、
実際の影響は、日々の食卓の中に“微細な変化”として現れる。
その変化を科学的に読み解くことで、
私たちは食材の旅路が今どこにいるのかを理解できる。

気温の上昇は、植物の“生理時計”を狂わせる

植物は、気温と日照を手がかりに成長のタイミングを決めている。
しかし気温が上がると、この“生理時計”がずれ始める。

  1. 成熟のタイミングが早まり、味が変わる
    気温が高いと、
  • デンプンの蓄積
  • 糖の生成
  • 香り成分の合成
    が早く進む。
    その結果、
  • 米の粘りが変わる
  • 野菜の甘味がピークに達する前に収穫期が来る
  • 果物の香りが弱くなる
    味の変化は、植物の“時間のずれ”として現れる。

 2. 夜温の上昇が香り成分を減らす
  植物は夜間に香り成分(テルペン類など)を合成する。
  夜温が高いと、このプロセスが阻害される。
  つまり、夜の気温が香りの質を決める。

    降水パターンの変化は、土壌と微生物に影響する

    気候変動は、雨の降り方にも影響を与えている。
    豪雨と干ばつの増加は、土壌と微生物の生態系を揺さぶる。

    1. 豪雨は土壌の栄養を“流し去る”
      強い雨は、
    • 表土の流出
    • ミネラルの溶脱
    • 微生物層の破壊
      を引き起こす。
      これは、
      土壌の“味の基盤”が削られることを意味する。

     2. 干ばつは微生物の活動を止める
      微生物は水がなければ活動できない。
      干ばつが続くと、

      • 有機物の分解が止まる
      • 栄養循環が滞る
      • 土壌の“生命力”が低下する
        結果として、作物の味や栄養に影響が出る。

      海水温の上昇は、海の食材の“旨味地図”を変える

      海の世界でも、静かな変化が進んでいる。

      1. 海藻のミネラル組成が変わる
        海水温が上がると、海藻の光合成効率が変化し、
      • ミネラル吸収
      • ポリフェノール生成
      • 旨味成分
        に影響が出る。
        海藻の味は、海水温の“履歴”を反映する。

       2. 魚の回遊ルートが変わる
        水温は魚の生理に直結するため、
        回遊ルートや産卵場所が変わり、
        漁獲量や脂質組成にも影響が出る。
        魚の味は、水温という環境要因の変化に敏感だ。

        気候変動は、食材の“旅路の地図”を書き換えている

        気候変動の影響は、

        • 香り
        • 栄養
        • 生産量
          といった形で、静かに、しかし確実に現れている。
          これは悲観すべきことではなく、
          食材の旅路が新しいフェーズに入ったと捉えることもできる。
          自然環境が変われば、
          人間の技術も変わる。
          農業も、漁業も、発酵文化も、
          新しい環境に適応しながら進化していく。
          食材の旅路は、止まらない。
          ただ、形を変えながら続いていく。


        次回予告:後継者不足と地域食材の未来

        次回は、自然環境ではなく“人間側の変化”に焦点を当てる。
        後継者不足、人口減少、地域経済の変化。
        これらが食材の旅路にどのような影響を与えているのかを、
        現場の視点と科学的視点の両方から読み解く。
        食材の未来は、
        自然環境と人間社会の両方の変化の中で形づくられていく。

        この記事の著者

        KANU

        健康食品および美容商品を販売するECショップ『トーチ(Touchi)』の運営をしております。
        旅行会社で培ったネットワークを活かして全国各地のご当地素材を使ったの商品を販売しています。北は北海道から南は沖縄まで全国各地飛び回っております。
        『トーチ』について自己紹介を兼ねて説明させてさせていただきます。
        2人目の子供を大学進学させ一段落した折、人生の転機に向けた脱サラ修業を始めました。メルカリのリユース品販売では古物商取引と顧客対応を経験し、アマゾンの美容商品販売では知的財産権について経験しました。
        そして、2025年8月に自社ECサイト『トーチ』を設立するに至ったのです。
        私は、今年で13年目になる「クリエイティブ・ツアーズ株式会社」の役員も務めておりますので、そのネットワークを活かし、ご当地素材に火をともすような商品販売をしていきたいと考えております。

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