『日本の食材の知られざる旅路』(5/12) | トーチ

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短編小説

『日本の食材の知られざる旅路』(5/12)

第5回:川と里の食材 ― 人と自然の“境界線”で生まれるもの

山と海のあいだに広がる“川と里”は、日本の食文化において最も人間の営みが濃く反映される場所だ。
ここは、自然の力と人間の技術が絶えず交差し、「自然の恵み」ではなく「自然と人間の共同作品」が生まれる領域である。
川の流れ、土壌の肥沃度、微生物の生態系、農業技術、発酵文化。
これらが複雑に絡み合い、米・野菜・発酵食品といった“日本の食の基盤”を形づくってきた。

川は、山のミネラルを運ぶ“循環の動脈”である

川の役割を科学的に見ると、単なる水の通り道ではない。
それは、山で生成されたミネラルを里へ運ぶ“栄養循環の動脈”だ。

  1. 川はミネラルの“輸送システム”
    山で溶け出したミネラルは、
  • 水の流速
  • 河床の地質
  • 微生物の活動
    によって形を変えながら下流へ運ばれる。
    カルシウム、マグネシウム、カリウム、微量元素。
    これらは、里の土壌の肥沃度を決定する基盤になる。

 2. 川の流速が“味の個性”をつくる
  速い流れ → 酸素が豊富で、好気性微生物が活発
  ゆるやかな流れ → 有機物が蓄積し、嫌気性微生物が増える
  この違いが、

    • 米の香り
    • 野菜の甘味
    • 発酵食品の微生物構成
      に影響を与える。
      川は、味の“初期条件”を調整する自然の装置だ。

    里山は、人間が維持してきた“半自然生態系”である

    里山は、完全な自然でもなければ、完全な人工環境でもない。
    人間が薪を取り、草を刈り、田畑を耕し、森を管理することで維持されてきた“半自然生態系”だ。
    科学的に見ても、里山は非常にユニークな環境である。

    1. 人間の活動が生物多様性を高める
      草刈りや間伐は、
    • 光環境
    • 土壌温度
    • 微生物の多様性
      を変化させ、結果として植物の多様性を高める。
      多様な植物は、
      多様な微生物を育て、
      それが土壌の栄養循環を豊かにする。
      つまり、里山の豊かさは“人間の手入れ”によって生まれる。

     2. 田畑は“微生物の実験場”でもある
      田んぼや畑の土壌は、

      • 水分量
      • 有機物
      • 微生物群
        が絶えず変化する“動的な生態系”だ。
        この環境が、
        米の香りや甘味、野菜の旨味を決定づける。

      米は、川と里の“共同研究の成果物”である

      米の味は、

      • 水質
      • 土壌微生物
      • 気温
      • 品種
      • 農家の技術
        が複雑に絡み合って決まる。
      1. 水質が米のデンプン構造を変える
        軟水 → デンプンが均一に糊化し、ふっくらした食感
        硬水 → 粒がしっかりし、香りが立つ
        水質の違いは、米の“食感と香りの設計図”になる。
      2. 土壌微生物が米の香りを決める
        土壌中の微生物は、
        有機物を分解し、植物が吸収しやすい形に変える。
        微生物の構成が変われば、
        米の香りや甘味も変わる。
        米は、土壌微生物の“翻訳結果”でもある。

      発酵文化は、川と里の“微生物生態系”が育てた

      味噌、醤油、漬物、日本酒。
      これらは、川と里の微生物生態系がなければ成立しない。

      1. 水系の菌が発酵の方向性を決める
        川沿いの地域は、
        水系由来の微生物が空気中に多く存在する。
        これが、
      • 味噌の香り
      • 醤油の深み
      • 日本酒の発酵スピード
        に影響を与える。

       2. 発酵は“地域の微生物の履歴”である
        同じレシピでも、地域が違えば味が変わる。
        それは、微生物の構成が地域ごとに異なるためだ。
        発酵食品は、
        その土地の微生物の“集合知”と言える。

        川と里の食材は、自然と人間がつくる“境界の味”である

        山の食材が“自然の長期プロセス”の産物であり、
        海の食材が“動的な自然システム”の産物だとすれば、
        川と里の食材は、
        自然 × 人間の技術 × 微生物の生態系が交差する“境界の味”だ。
        この視点を持つと、
        米の甘味も、野菜の香りも、発酵食品の深みも、
        すべてが“自然と人間の共同作品”として理解できる。


        次回予告:気候変動が食材に与える静かな影響

        次回は、現代の食材が直面している“静かな変化”を扱う。
        気温上昇、降水パターンの変化、海水温の上昇。
        これらが、食材の味・栄養・生産量にどのような影響を与えているのか。
        食材の旅路は、
        今まさに変わりつつある。

        この記事の著者

        KANU

        健康食品および美容商品を販売するECショップ『トーチ(Touchi)』の運営をしております。
        旅行会社で培ったネットワークを活かして全国各地のご当地素材を使ったの商品を販売しています。北は北海道から南は沖縄まで全国各地飛び回っております。
        『トーチ』について自己紹介を兼ねて説明させてさせていただきます。
        2人目の子供を大学進学させ一段落した折、人生の転機に向けた脱サラ修業を始めました。メルカリのリユース品販売では古物商取引と顧客対応を経験し、アマゾンの美容商品販売では知的財産権について経験しました。
        そして、2025年8月に自社ECサイト『トーチ』を設立するに至ったのです。
        私は、今年で13年目になる「クリエイティブ・ツアーズ株式会社」の役員も務めておりますので、そのネットワークを活かし、ご当地素材に火をともすような商品販売をしていきたいと考えております。

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