『日本の食材の知られざる旅路』(4/12) | トーチ

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『日本の食材の知られざる旅路』(4/12)

第4回:海の食材 ― 潮と風がつくる旨味の科学

日本の海は、世界でも特異な“旨味の生成装置”だ。
その理由は、単に海に囲まれているからではない。
海流・海底地形・水温・塩分・光・微生物・生態系の循環が、極めて複雑に絡み合っているからだ。
海の食材の味は、偶然ではない。
それは、物理学・化学・生物学が連続的に作用する“動的なシステム”の結果である。

海流は、海の食材の“設計図”である

日本近海には、黒潮と親潮という二つの巨大な海流が流れている。
この海流の存在が、海の食材の味を決定づける最重要因子だ。

  1. 黒潮(暖流)は、脂の乗った魚を育てる
    黒潮は水温が高く、プランクトン量は少ない。
    そのため、魚は長距離を回遊しながら効率的にエネルギーを蓄える必要がある。
    結果として、
  • 脂質組成が豊か
  • DHA・EPAが高い
  • 身がしなやかで旨味が強い
    黒潮系の魚は、“運動量の味”を持つ。

 2. 親潮(寒流)は、旨味の源であるプランクトンを運ぶ
  親潮は栄養塩(窒素・リン・ケイ素)を大量に含む。
  これが植物プランクトンを増やし、
  植物プランクトンが動物プランクトンを育て、
  それを小魚が食べ、大型魚へとつながる。
  つまり、親潮は“旨味の供給源”だ。

 3. 二つの海流が交わる場所は、世界的にも稀な“旨味の交差点”
  黒潮の脂 × 親潮の栄養
  この交差が、日本の海産物の圧倒的な旨味を生む。

    海底地形が、海藻と貝類の味を決める

    日本列島の海底は、急峻で複雑だ。
    この地形が、海藻や貝類の味に直接影響する。

    1. 光の届き方が海藻の成分を変える
      海藻は光合成を行うため、光の強さと波長が重要だ。
    • 浅瀬 → 光が強く、ポリフェノールが増える
    • 深場 → 光が弱く、ミネラル吸収が増える
      海藻の香りや旨味は、光環境の“記録”である。

     2. 海底の岩質が貝類のミネラル組成を変える
      貝は海水中のミネラルを濾過して成長する。
      そのため、海底の地質が変われば、

      • カルシウム
      • マグネシウム
      • 微量元素
        のバランスが変わり、味に差が出る。

      潮と風は、海の食材の“調味料”である

      海の味は、潮と風によってさらに変化する。

      1. 潮の満ち引きが海藻の旨味を濃縮する
        潮が引くと海藻は空気に触れ、
        紫外線ストレスにより抗酸化物質(フコキサンチンなど)が増える。
        これは、海藻の香りと旨味の重要な要素だ。
      2. 海風が陸の食材にも影響する
        海風は塩分とミネラルを運ぶため、
        沿岸部の野菜や果物の味にも影響を与える。
        海の味は、海だけで完結しない。
        海風は“陸の食材の隠し味”でもある。

      魚の旨味は、生理学と環境の相互作用で決まる

      魚の味は、単に種類で決まるわけではない。
      その背後には、生理学的な要因がある。

       1. 運動量が脂質組成を変える

        回遊魚は、長距離を泳ぐために脂質を蓄える。
        これが旨味の源になる。

       2. 水温がアミノ酸の量を変える

        低水温 → 身が締まり、旨味成分(イノシン酸)が増える
        高水温 → 脂質が増え、甘味が強くなる

       3. ストレスが味に影響する

        漁法や処理方法によって、
        ATP分解のスピードが変わり、旨味の生成に差が出る。

        魚の味は、
        生理学 × 環境 × 人間の技術の三位一体で決まる。

      海の食材は、潮・光・風・地形・生態系がつくる“動的な成果物”である

      海の食材は、静的な存在ではない。
      それは、

      • 海流
      • 海底地形
      • 光環境
      • 塩分濃度
      • 微生物
      • 生態系の循環
      • 魚の生理学
        が絶えず変化し続ける中で形成される。
        海の味とは、
        “動き続ける自然の履歴”そのものだ。


      次回予告:川と里の食材 ― 人と自然の“境界線”で生まれるもの

      次回は、山と海の間にある“川と里”へ。
      川のミネラル循環、里山の生態系、農業技術、発酵文化。
      これらがどのように米・野菜・発酵食品の味を形づくってきたのかを科学的に紐解く。
      川と里は、
      自然と人間が最も密接に交わる“境界の食文化”だ。

      この記事の著者

      KANU

      健康食品および美容商品を販売するECショップ『トーチ(Touchi)』の運営をしております。
      旅行会社で培ったネットワークを活かして全国各地のご当地素材を使ったの商品を販売しています。北は北海道から南は沖縄まで全国各地飛び回っております。
      『トーチ』について自己紹介を兼ねて説明させてさせていただきます。
      2人目の子供を大学進学させ一段落した折、人生の転機に向けた脱サラ修業を始めました。メルカリのリユース品販売では古物商取引と顧客対応を経験し、アマゾンの美容商品販売では知的財産権について経験しました。
      そして、2025年8月に自社ECサイト『トーチ』を設立するに至ったのです。
      私は、今年で13年目になる「クリエイティブ・ツアーズ株式会社」の役員も務めておりますので、そのネットワークを活かし、ご当地素材に火をともすような商品販売をしていきたいと考えております。

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