『日本の食材の知られざる旅路』(10/12) | トーチ

BLOG & INFO

短編小説

『日本の食材の知られざる旅路』(10/12)

第10回:便利さと本質 ― 私たちは何を失い、何を得たのか

現代の食生活は、かつてないほど便利になった。
冷蔵技術、加工食品、物流網、保存料、電子レンジ。
これらは、私たちの生活を大きく支え、食材との距離を劇的に縮めた。
しかし同時に、便利さは“本質”を見えにくくする。
食材の旅路、味の背景、技術の意味。
それらが、便利さの影に隠れてしまうことがある。
便利さは悪ではない。
むしろ、現代社会に不可欠な価値だ。
ただし、便利さが何をもたらし、何を奪ったのかを理解することは、
食材の未来を考えるうえで重要な視点になる。

便利さがもたらしたもの

まず、便利さは確かに多くの恩恵をもたらした。

  1. 食の安全性と安定供給
    冷蔵・冷凍技術、殺菌技術、保存料。
    これらは、食中毒のリスクを減らし、
    季節や地域に関係なく食材を手に入れられるようにした。
    科学的に見ても、
    現代の食品安全技術は人類史上もっとも高度だ。
  2. 時間の節約と生活の自由度
    加工食品や半調理品は、
  • 調理時間の短縮
  • 家事負担の軽減
  • 多様な食文化へのアクセス
    を可能にした。
    これは、特に都市生活において大きな価値を持つ。

 3. 食の多様性の拡大
  物流網の発達により、
  世界中の食材が日常的に手に入るようになった。
  便利さは、食文化の“選択肢”を広げた。

    便利さが奪ったもの

    一方で、便利さは“本質”を見えにくくする側面もある。

    1. 食材の“背景”が見えなくなる
      加工食品は、
    • どこで育ち
    • 誰がつくり
    • どんな環境で生まれたのか
      といった情報を切り落とす。
      その結果、
      食材が“無名化”される。
      味の個性や地域性が薄れ、
      食材が“均質な商品”として扱われやすくなる。

     2. 微生物との距離が遠くなる
      発酵食品や生鮮食品は、微生物との共生によって成立している。
      しかし、過度な殺菌や加工は、
      微生物の多様性を奪い、
      味の深みや複雑性を減らすことがある。
      科学的に見ても、
      微生物の多様性は味の多様性と強く相関する。

     3. 季節感が薄れる
      便利さは、季節を“消す”。
      一年中同じ野菜が手に入り、
      旬の意味が曖昧になる。
      旬とは、
      自然環境と食材の生理が最も調和する瞬間
      であり、味のピークでもある。
      便利さはその“ピークの意味”を弱めてしまう。

      便利さと本質は対立しない。問題は“距離”である

      便利さそのものが悪いわけではない。
      問題は、便利さが食材との距離をどれだけ広げるかだ。

      1. 距離が広がると、理解が薄れる
        食材の背景が見えなくなると、
      • 味の違い
      • 地域性
      • 生産者の技術
      • 自然環境の影響
        が理解しにくくなる。
        理解が薄れると、
        選択の基準も曖昧になる。

       2. 距離が縮まると、価値が見えてくる
        逆に、食材の旅路を知ると、

        • 味の理由
        • 技術の意味
        • 自然環境との関係
          が立体的に見えてくる。
          便利さの中でも、
          本質を見失わない選択ができるようになる。

        便利さの時代だからこそ、“本質”が価値になる

        現代は、便利さが当たり前になった時代だ。
        だからこそ、

        • 産地の物語
        • 生産者の技術
        • 微生物の生態系
        • 地形と気候の履歴
          といった“本質的な価値”が再評価されている。
          便利さの時代において、
          本質は“贅沢”ではなく、
          選択の基準になりつつある。


        次回予告:食べるとは、世界とつながる行為である

        次回は、食材の旅路をさらに広い視点で捉える。
        食べるという行為が、
        自然、生産者、地域、文化、そして未来と
        どのようにつながっているのか。
        食べることは、
        世界との関係を結び直す行為でもある。

        この記事の著者

        KANU

        健康食品および美容商品を販売するECショップ『トーチ(Touchi)』の運営をしております。
        旅行会社で培ったネットワークを活かして全国各地のご当地素材を使ったの商品を販売しています。北は北海道から南は沖縄まで全国各地飛び回っております。
        『トーチ』について自己紹介を兼ねて説明させてさせていただきます。
        2人目の子供を大学進学させ一段落した折、人生の転機に向けた脱サラ修業を始めました。メルカリのリユース品販売では古物商取引と顧客対応を経験し、アマゾンの美容商品販売では知的財産権について経験しました。
        そして、2025年8月に自社ECサイト『トーチ』を設立するに至ったのです。
        私は、今年で13年目になる「クリエイティブ・ツアーズ株式会社」の役員も務めておりますので、そのネットワークを活かし、ご当地素材に火をともすような商品販売をしていきたいと考えております。

        コメントは受け付けていません。

        プライバシーポリシー / 特定商取引法に基づく表記 / 利用規約

        Copyright © 2025 酒井 恒和 All Rights Reserved.

        CLOSE