『日本の食材の知られざる旅路』(1/12)
第1回:食材は“生まれた瞬間から旅をしている
私たちは日常的に、食材を「購入可能な単位」として扱っている。
しかし、科学的に見れば、どんな食材も“そこに突然現れた”わけではない。
それぞれが、生物学・地質学・気象学・人間の営みと複雑に絡み合いながら形成されている。
たとえば、一粒の米。
その成長過程を分解すると、
- 土壌中のミネラル組成
- 水の硬度と流域の地質
- 日射量と気温の推移
- 微生物群(マイクロバイオーム)の働き
- 農家の管理技術
といった複数の要因が、最終的な味や栄養価に影響を与えている。
つまり米は、単なる炭水化物源ではなく、
自然環境と人間の技術が相互作用した“複合的なアウトプット”だと言える。
食材の旅路は、環境科学と人間の歴史の交差点にある
食材の背景を科学的に追うと、必ず“環境”と“人”の関係性に行き着く。
山の水は、何十年もかけて岩石からミネラルを溶かし出し、
その水が田畑に流れ込み、微生物が有機物を分解し、
その結果として植物が栄養を吸収する。
この一連のプロセスは、
地質学・水文学・微生物学・農学が連続的に作用する“自然のシステム”だ。
そして、そのシステムの上に、
- どのタイミングで水を入れるか
- どの品種を選ぶか
- どの発酵技術を使うか
といった人間の意思決定が重なる。
食材とは、自然と人間の“共同研究の成果物”のようなものだ。
なぜトーチは「旅路」を描くのか
自然派食品を扱うブランドとして、
「栄養成分」や「機能性」だけを語ることはできる。
しかし、科学的に見ても、食材の価値は数値化できる部分だけでは説明しきれない。
たとえば、
- 同じ品種でも土壌微生物の構成が違えば味が変わる
- 同じ海藻でも潮流や水温の違いでミネラル量が変動する
- 同じ発酵食品でも菌の生態系が地域ごとに異なる
こうした“非線形な変動”は、科学的にも非常に興味深い。
だからこそトーチは、
「食材がどのような環境要因と人間の技術によって形づくられているのか」
という“旅路”そのものを伝えたい。
旅路を知ることは、
食材を単なる商品ではなく、
自然環境と人間の知恵が積み重なった成果物として理解することにつながる。
次回予告:日本の食文化は“地形”がつくった
次回は、食材の旅路を理解するための基盤として、日本列島の地形・気候・生態系が、どのように食文化を形成してきたのかを科学的視点から整理する。
- 山が多い国だからこそ生まれた栄養特性。
- 海に囲まれた国だからこそ発達した保存技術。
- 四季がある国だからこそ残った発酵文化。
- 地形と食材の因果関係
を読み解く回になる。
